皆さんこんにちは。

今回のブログでは、E60のファンベルト緩みの修理について紹介させて頂きます。

入庫されたE60 530iは、エンジンをかけるとエンジンルームから“キュルキュルキュル・・・”という異音がするという事で点検に来られ、異音の原因がファンベルトの緩みからくるものと診断され修理することとなりました。

ファンベルトと言えば、昔はエンジンを冷却するラジエーターを冷やすためのファンを回すベルトのことを指していましたが、現在のBMWのラジエーターファンは電動式となっているため、現在ではエアコンコンプレッサー、オルタネーター、パワステポンプを回すためのベルトを指しています。

ここでファンベルトの構造を少しだけ解説しますね。

ファンベルトはベルトが緩まないよう常に張力が加えられることで一定の張りが保たれています。

この張りを保つための張力を機械的に自動調整しているのがベルトテンショナーという部品です。

ファンベルトはこんな感じにベルトテンショナーとテンションローラー(ガイドローラー)を経由する形で取付けられ、Vベルトから伝えられる回転エネルギーがファンベルトを還してエアコンコンプレッサー、オルタネーター、パワステポンプに伝えられています。

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入庫されたE60 530iの“キュルキュルキュル・・・“というエンジンルームからの異音は、このファンベルトの緩みから発生した音だった訳です。

つまり、テンショナーの張力が弱まってファンベルトが緩んでしまっていたという事なんですね。

な~んだ、ただのベルトの緩みか・・・と思った方がいるかも知れませんが、このファンベルトの緩みを侮ってはいけません!!

ファンベルトの緩みをそのまま放置していると最悪ケースとしてファンベルトが外れてしまい、エアコンコンプレッサー、オルタネーター、パワステポンプへ動力が伝わらなくなることで車が制御不能な状況に陥る危険があります。

同時に、外れたファンベルトがそれをきっかけに引き裂け、ラジエーターファンなど周辺部品に絡まって破損してしまうことも懸念されるため、たかがファンベルトの緩みと侮ってはいけないのです!!

※現在のファンベルトは、材質上切れるということは滅多に発生しないのですが、傷などのダメージを受けることで「裂きイカ」のようにベルトが縦に裂けてしまうことがあるそうです。

ファンベルトが緩む原因についても少し触れていきたいと思いますね。

ファンベルトの緩みの原因を一言で言ってしまうと“経年劣化”となります。

運転免許をお持ちの皆さんは、教習所での授業で行った運行前点検の内容を覚えていますか?

あまりにも昔の事なので“忘れました~“とか言ったら国土交通省から怒られそうですけど(^^;

ボンネットを開けてファンベルトを指で押して緩みをチェックしましたよね!!

これを覚えている皆さんはファンベルトの経年劣化がファンベルトそのものという印象が強いかも知れませんが、この経年劣化はファンベルトを構成しているファンベルト、ベルトテンショナー、テンションローラーの全てに該当します。

ファンベルトの耐久年数を気にされる方も多いと思います。ファンベルトは経年劣化で表面の筋にひび割れなどが確認されてきますが、ファンベルト自体の材質も昔と変わっているため、外的要因などよほどの事が無い限りファンベルトが経年劣化だけで裂けるなんてことは起きないそうです。

そのため、ファンベルトに至っては耐久年数はあくまで目安とし、定期点検で経年劣化によるひび割れがひどいようであれば交換をお勧めしています。

これに対して機械的にベルトの張力を調整してくれるベルトテンショナーの耐久年数はおよそ5万キロと言われています。

ベルトテンショナーが経年劣化してくるとベルトを掛けているローラーの軸がズレてくることで張力制御がうまく行えなくなってきます。

この軸ズレによりファンベルトは手前側に徐々にズレてきてしまいます。

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こちらは軸ズレしていない正常なベルトテンショナーの状態となります。

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ファンベルトは手前にズレることなくベルトテンショナーにしっかりと掛かってますよね。

そしてこちらが今回入庫されたE60 530iのベルトテンショナーの状態となります。

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経年劣化により軸ズレしたベルトテンショナーのものとなりますが、ファンベルトが手前側にズレてしまっているのが分かりますよね。

ベルトテンショナーの軸ズレを放置し症状が更に進行すれば、最悪ケースとしてファンベルトがベルトテンショナーから外れてしまい、高速回転中に外れたファンベルトはそれをきっかけに引き裂けエンジンルームの各部品に絡まって大ダメージを与える危険性があります。

場合によってはオーバーヒートを起こしてエンジン自体が使用不可になるという最悪な状況にもなり兼ねませんし、エアコンコンプレッサー、オルタネーター、パワステポンプといった部品は稼働するための動力を突如失う事になりますので、運転中に起きれば非常に危険な状況にさらされることとなります。

 

テンションローラー(ガイドローラー)は直接ファンベルトの緩み原因となることはほとんどありませんが、中のベアリングが経年劣化してくることで“ガラガラ・・・”“キキキキ・・・”といった異音を発するようになります。

こうなるとテンションローラーの回転抵抗が増し、その負荷がテンションローラーにダメージを蓄積することとなるため間接的にテンションローラーの寿命を縮めてしまう事になります。

その逆もしかりということになるため、ベルトテンショナーとテンションローラー(ガイドローラー)はセットでの交換が望ましいと言えます。

 

ということで入庫されたE60 530iはベルトテンショナーとテンションローラー(ガイドローラー)の交換という訳ですが、前置きがちょっと長かったので作業手順についてはさらっと説明していきますね。

ご自身の車のボンネットを開けてベルトテンショナーの場所を見て頂ければお分かりいただけると思いますが、ベルトテンショナーとテンションローラー(ガイドローラー)は結構狭い場所にあるため、作業効率を考えて最初に邪魔になる電動ファンなどは取り外します。

作業エリアが確保されたところでベルトテンショナーとテンションローラー(ガイドローラー)を順に外していく訳ですが、先の説明にある通りこの2つの部品には張力のかかったファンベルトが巻き付いてありますので、最初にファンベルトを緩める必要があります。

ベルトテンショナー本体正面にある六角の突起に六角レンチをはめて時計回りに回すとファンベルトの張りが緩むのでファンベルトを取り外します。

もしこの作業をDYIでやろうと思う人がいるなら、取り外す前必ずファンベルトがどう巻き付いていたのかをメモっておきましょうね。

ファンベルトを外したらベルトテンショナーとテンションローラー(ガイドローラー)を外し、新しいベルトテンショナーとテンションローラー(ガイドローラー)に交換します。

交換が終わったらファンベルトをもとあったように巻き付け、ベルトテンショナー本体正面の六角の突起を今度は半時計回りにレンチで回してファンベルトを張ります。

後は交換作業のために取り外した電動ファン等を元通りに組み付け交換作業は終了です。

エンジンをかけてファンベルトの掛かり具合などの状態を確認すれば全ての作業が終了となります。

 

交換後はエンジンからの異音も無くなり、走りの方も心なしかスムーズになりました(>A<b

 

皆さんも気になるようでしたらベルトテンショナーのファンベルトの状態を一度確認してみて下さい。

エンジンからの異音が聞こえなくても写真のようにファンベルトがずれているようなら危険信号ですので、大事に至る前の予防対策として早めの交換をお勧めします。

 

私達は、長く快適なBMWライフを満喫いただくため、トレーニングを受けたメカニックがメンテナンスさせて頂きます。

他店でBMWをご購入された方でも「Tsutae’s Check Up」でBMWの診断をさせて頂きます。

つたえファクトリーでは、法定12ヵ月点検以上にBMW専用の点検項目を設けた「Tsutae’s Check Up」をご提供しております。この点検内容は、「即交換」「早期交換」「予備交換」と3段階に分けた診断書をお渡しし、今後のメンテナンス計画についてコスト面も踏まえながらメンテナンスさせて頂きます。

私達はBMWを身近に感じているパートナーとして、様々なご要望にお応えして参ります。

 

それでは皆さん、また次回お会いしましょう!!